ガンディー思想の現代的意義:スローズナヤ・クラサタだより(10)

ガンディー思想の現代的意義 今回は、《ガンディー思想にはどのような現代的意義があるのか》を探るため、石井一也著『身の丈の経済論―ガンディー思想とその系譜』(法政大学出版局、2014年)を取り上げる。 本書は、ガンディーの経済思想を「身の丈の経済」…

現代における手仕事の積極的意義:スローズナヤ・クラサタだより(9)

現代における手仕事の積極的意義 機械による生産が圧倒的に主流となっているいま、手仕事は消えゆくのみなのだろうか。そう受けとめる人が多い一方、手仕事に惹かれる人もまた増えている。機械化があまりに進行し、殺伐としたゆとりのない社会のなかで、人間…

エリカ・チェノウェスの非暴力市民抵抗運動論―Erica Chenoweth, Civil Resistance :What everyone needs to know, Oxford Univ Pr., 2021等を取り上げつつ—:スローズナヤ・クラサタだより(8)

エリカ・チェノウェスの非暴力市民抵抗運動論―Erica Chenoweth, Civil Resistance:What everyone needs to know, Oxford Univ Pr., 2021等を取り上げつつ エリカ・チェノウェス(Erica Chenoweth)は、1980年生まれの米国の政治学者である。オハイオ州…

山本芳久『世界は善に満ちている』新潮選書、2021年を読んで:スローズナヤ・クラサタだより(7)

山本芳久『世界は善に満ちているートマス・アクィナス哲学講義』新潮選書、2021年を読んで いま世界には暴力が蔓延している。いたる所でさまざまな差別、格差をめぐる対立が先鋭化し、抑圧的体制のなかで民主化勢力への弾圧も強化されている。環境問題も深刻…

アメリカの黒人解放運動における非暴力の位置:スローズナヤ・クラサタだより(6)

アメリカの黒人解放運動における非暴力の位置 非暴力闘争について思索を深めるために、今回はアメリカの黒人解放運動において非暴力がどのような位置を占めていたのかについて考えてみたい。以下では、中島和子著『黒人の政治参加と第三世紀アメリカの出発(…

アウンサンスーチーの非暴力主義:スローズナヤ・クラサタだより(5)

アウンサンスーチーの非暴力主義 いまミャンマーで展開されている非暴力闘争に大きな衝撃を受けている。軍政を何としても倒したいとする人々の意志の力と、死をも覚悟した厳しい姿勢に圧倒される。AFP通信によると4月11日の時点で700名以上もの市民(幼い…

ベネディクト・アンダーソン(加藤剛訳)『ヤシガラ椀の外へ』NTT出版、2009年を読んで:スローズナヤ・クラサタだより(4)

ベネディクト・アンダーソン(加藤剛訳)『ヤシガラ椀の外へ』NTT出版、2009年を読んで 本書は、ベネディクト・アンダーソンが日本の読者(主に研究を志す若い人)向けに執筆した知的遍歴をたどる自伝である。当初日本語版しかなかったが、今は英語版で読む…

斎藤幸平『人新世の「資本論」』集英社新書、2020年を読んで:スローズナヤ・クラサタだより(3)

斎藤幸平『人新世の「資本論」』集英社新書2020年、を読んで 本書は、マルクス晩年の思想に着目し、そこに現代の気候変動危機を乗り越えるヒントがあると説いたものである。これまでマルクスについては、晩年の思索が見逃され、それ以前にみられた進歩史観、…

川端康雄『ジョージ・オーウェル:「人間らしさ」への讃歌』岩波新書、2020年を読んで : スローズナヤ・クラサタだより(2)

川端康雄『ジョージ・オーウェル:「人間らしさ」への讃歌』岩波新書、2020年を読んで ジョージ・オーウェルといえば、誰しも『1984年』を思い浮かべ、ディストピア的世界を連想する。しかし本書は、そのような狭い見方をこえ生身のオーウェルに迫ろうとして…

注視したいミャンマーの行方 : スローズナヤ・クラサタだより(1)

注視したいミャンマーの行方 ミャンマーで軍事クーデターが起き、軍部支配への抗議行動に参加していた市民に重傷者が出ているという。今回のクーデターによって急速にミャンマーへの関心が高まっているが、日本人の多くはまだ同国について知るところが少ない…